「エントリーシートはいらんかね。よくできたエントリーシートだよ」
大みそか。学生は街角に立ち、行き交う企業たちに自己PRを繰り返しておりました。けれども企業はどこもみな忙しそうで、振り返ってはくれません。
「けっ。何が売り手市場だい」
夜になりました。学生は売れ残ったエントリーシートをカゴに入れ、とぼとぼと家路につきました。いつのまにか散らついていた雪はやがて本降りとなり、あたりは一面の銀世界。
アパートまであと少しというところで、学生は道端に並ぶ人事に気がつきました。吹きっさらしの風の中、人事はみな、雪に埋れかけています。
「これは気の毒だ。でも、俺はもっと気の毒なんだ」
いったんは通り過ぎた学生ですが、根はやさしい性格ゆえ、後ろ髪ひかれて仕方ない。膝まで積もった雪の中を引き返すと、売れ残りのエントリーシートを人事にかぶせてあげました。
「こんなもんで申し訳ないが、少しはましだろう」