導入事例 富士市 様

ICカード認証
5000名以上

テレワーク環境でもICカードを利用した多要素認証で、
高いセキュリティレベルを維持
緊急事態に行政が機能停止しない環境を整備

“ARCACLAVIS Waysによる多要素認証は、セキュリティの基本として継続利用しています。
テレワーク環境でも問題なく利用できています。”

Customer Profile

組織名
富士市
所在地
静岡県富士市
導入クライアント数
約2560台
ユーザー数
約5,000人
導入製品
ARCACLAVIS Ways
導入時期
(導入)2014年
(更新)2020年1月
富士市の画像

「強靱化モデル」に先駆けて、ICカード認証ソリューションを導入

静岡県東部に位置し、県内第3位となる約25万人の人口を誇る富士市。北に雄大な富士山を臨み、南に駿河湾を擁するなど、自然に恵まれた土地として知られている。また、古くから製紙業の町として栄え、衛生用紙の生産では国内有数のシェアを占めている。一方で富士市は、さらに安心で豊かなまちづくりを推進する目的で、2020年8月に「デジタル変革宣言」を発表するなど、積極的なデジタル活用施策にも果敢に取り組んできた。

2001年には地方自治体では先駆けて、職員約1200名にサーバベース型のシンクライアント端末を導入。2007年には、保守・運用負荷の軽減を目指し、仮想デスクトップ環境への移行を実現したほか、2011年にかけて、富士市はデジタルカラー複合機から印刷物を取り出す際の認証に、全職員に非接触型のICカードを配付。その後2014年にはICカード認証による端末利用時の認証強化を実現している。当時の状況について、富士市 総務部 情報政策課 課長の深澤安伸氏は次のように振り返る。

「当時は、マイナンバー利用事務系の端末に二要素認証を求める『自治体情報システム強靱性向上モデル』はまだ発表されていませんでしたが、今後高いセキュリティレベルを維持していくためには、マイナンバー利用事務系に限らず、すべての業務に多要素認証は必須だと感じていました。そこで、シンクライアントのログオン認証に、全職員に配付済のデジタルカラー複合機用のICカードを利用することとしました」(深澤氏)

この二要素認証のシステムとして選定されたのが「ARCACLAVIS Ways」だった。選定の決め手として深澤氏は、「既存のActive Directoryのスキーマを拡張する必要がなかったこと」を挙げる。スキーマを拡張すれば、次回のシステム更新時に他のベンダーの製品をActive Directoryと連携させるのが困難になる。ベンダーロックインのリスクを回避できる点が、システムの柔軟性を考えるうえでARCACLAVIS Waysの大きな魅力だったという。

また、富士市 総務部 情報政策課 主幹大長 剛二氏は、「配付済のICカードを回収することなく導入が進められることも、選定の決め手でした」と語る。導入の手軽さも選定を後押しした。

こうした過程を経て、富士市は2014年8月からARCACLAVIS Waysの本稼働を開始。ICカード認証によるセキュリティ強化が実現したことに加え、ユーザのログオン及びログオフを詳細に記録できるようになった。富士市 総務部 情報政策課 主査 井口悟史氏は、その効果を次のように話す。

「これまではログオンの記録しか残せませんでしたが、現在ではログオフはもちろん、その日時やログオン失敗の回数なども正確に記録できています。以前よりも確実な証跡管理が可能になったほか、ユーザの利用状況なども把握できるようになりました」(井口氏)

仮想環境を生かして短期間でテレワーク環境を整備

その後富士市は、2020年1月に情報システムのリプレースを実施。ARCACLAVIS Ways による二要素認証は維持したまま、仮想化基盤 Nutanix Enterprise Cloud OSを導入し、将来のシステム増強にも柔軟に対応できる情報インフラの仕組みづくりに取り組んだ。また、仮想化基盤の導入は、ディザスタリカバリ(DR)環境の構築も目的としていた。その背景には、富士市の地理的な条件も関わっていると大長氏は説明する。

富士市は海、山、川に囲まれていることから、さまざまな災害が想定されています。そのため仮に大規模災害が発生し、データセンターとの通信が切断されたとしても、業務が停止しないように備えなければなりません。そこで災害時に必要なインフラをバックアップできる仮想化基盤の導入が必要になりました」(大長氏)

さらに、2020年のリプレースでは、職員間のコミュニケーションの促進も図るため、Skypeの導入も果たしていたが、こうした取り組みは、思わぬ形で効果を発揮することとなった。

2020年4月、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は緊急事態宣言を発出。これにより、全国の自治体でもテレワークの導入が迫られた。まさに急転直下の事態だったが、従来からシンクライアント環境を整備しており、Skypeを用いて職員同士が連絡を取れる富士市にとって、テレワークへの移行は容易だった。唯一、テレワーク先から庁内のシステムにどのようにアクセスするかが課題となったが、閉域接続専用SIMを活用することで、インターネットVPNを介さないアクセスが可能になり、自治体情報システム強靱性向上モデルに準拠したネットワーク環境を構築することができた。深澤氏は当時の状況をこう振り返る。

「閉域接続専用SIMの導入に際し、さまざまなベンダーから情報を収集しました。その中でも両備システムズから提供された資料が大変役に立ちました。『閉域接続専用SIMを使えば、すぐにでもテレワークが実くなるように準備を進めました」(深澤氏)

緊急事態宣言の発出から約2週間後、富士市はテレワーク環境の構築を終え、地区まちづくりセンター(公民館)などでの分散勤務や在宅勤務をスタートさせた。端末に情報が一切残らない仮想環境と、ARCACLAVIS Waysの二要素認証で高いセキュリティレベルを維持しながら、非常に短期間でテレワーク環境を準備できたのは、これまでの地道な情報政策への取り組みが実を結んだといえる。

安全なテレワーク環境を活用しワークスタイルの変革を推進

富士市では、ICカードリーダーを内蔵した端末でARCACLAVIS Waysを活用している。テレワークでも使い勝手が良いという。

富士市のテレワーク環境の構築は、緊急時の対応にも役に立っているという。富士市 総務部 情報政策課 主査 加藤 小太郎氏は「今回導入した仕組みを利用して、市長及び副市長の自宅に緊急時用のテレワーク環境を整えました。これにより、災害発生時における『災害対策本部会議』がリモートで実施可能になるなど、緊急時でも安定した指令を下せるようになりました」と語る。

従来、豪雨や地震などの災害発生時には、その規模に応じて富士市の庁舎内に災害対策本部を設置し、市長及び副市長をはじめ幹部職員が参集する必要があった。しかし、それでは深夜や早朝の対応にどうしても遅れが出てしまうだけでなく、庁舎へ移動するリスクも伴う。緊急時における迅速な意思決定や業務継続性の確保といった課題の解消も、テレワーク環境の構築を通じて大いに期待できる状況といえる。

現在、富士市はデジタル変革宣言に基づく取組として、「行政手続のオンライン化」や「マイナンバーカードの活用」のほか、「ワークスタイル変革の推進」などを挙げている。ARCACLAVIS Waysをはじめとしたセキュリティソリューションを活用しながら、テレワークやWeb会議などの運用を今後も継続し、より生産性の高い行政経営を実現していく構えだ。