Vol.04留年寝太郎

あれよあれよと、3年も留年。
村にはもう、寝太郎を相手にする者はおりませんでした。
「どれ。そろそろエントリーでも」
そう思ってあちこちの戸を叩くのですが、反応は常にサイレント。
「けっ。冷たいやつらめ」
いろんなことを棚に上げた寝太郎は、部屋にこもってスマホいじり。けれど、つい就活掲示板に入り浸っては、みんなの内定報告を高速でリロードし、ますます不機嫌になる始末。そんなある日のこと。訪ねてきたのは、隣村の村長ご一行です。
「神さまがおいでなのは、こちらですか」
「神さま?」
「はい。寝太郎どのは、村中からお祈りされる存在と聞きました。それってもう、神なのかなと」
心の底では「何言ってんだコイツ」と思ったものの、神と奉られて悪い気はしません。

「はいそうです。私が神です」
「おお、やはり」村長は感激を隠さず、こう切り出しました。「じつは私の村は、人財難に悩まされております。神の力で、そこをなんとか」
「そんなこと言われても」。寝太郎、いきなりピンチ。しかし、はたと思い当たりました。そうだ。俺には、留年中にのめり込んでいたダウジングがあるじゃないか。

偶然なのか、それとも必然か。寝太郎が示した地点からは澄んだ瞳の就活生がこんこんと湧き出し、よく見るとAランクからFランクまで含まれており、さらに学歴フィルターと書かれたザルまで見つかって大騒ぎ。寝太郎はロマンスの神として君臨したばかりか、会社説明会でも積極的に手を挙げられるようになりました。

さまざまな事情でブランクがあったとしても、そこにはきっと、あなたにしかない経験が眠っている。多様な人財が求められるいま、その活かし方を前向きに考えてみてはいかがでしょうか?きっと、自信が湧いてくるはずです。