Vol.03一寸志望

「どうしても、インターンシップに参加したいのです。都に行かせてください」
学生は、父に頼み込みました。
「都までは命がけ。なぜ、そこまでして参加したいのだ」
「はい。CMで知ってる企業だからです」
「待て待て。その程度の志望動機か。ちっちゃすぎないか」
「しかし父上。私は社会経験といえばバイトくらいの、この国の典型的な学生です。壮大な志望動機など、いまの段階では持ちようがないではありませんか」
「決意は固いのだな」
そのまっすぐな瞳に気圧されたのか、父は学生に黒い服と靴、Google Map™を与え、とうとう都行きを許しました。

都への道のりは乗り換えと地下迷宮にあふれた危険なものでしたが、特に何事もなく、学生はインターンシップ会場にたどりつきました。

さすがは有名企業のインターンシップ。会場は同じいでたちをしたメンであふれていました。メインプログラムは、資源の枯渇が目前に迫った地球を救うための壮大なグループワーク。学生が打ち出したアイデアは、人類縮小プロジェクト。人間を一寸(3センチ)程度に縮小することができれば、たとえばお椀を船にし、針を剣として使うなど、ほんのわずかな資源を最大限に活用できる。このアイデアが評価され、学生のチームは表彰まで受けたのです。

「インターンシップはどうであったか」
実家に戻った学生は、父の問いかけにこう答えました。
「はい。私は、何のために仕事がしたいのか。どんな仲間と仕事がしたいのか。それが明確になったように思います」
「エビデンス。」父は目を細めました。
「自分らしい志望動機をつかみかけているようだな。これならば、都に送り出した甲斐があったというもの」

インターンシップは、会社、仕事、さらには社会を具体的に知るチャンス。まずは飛び込んでみましょう。時には、打ち出の小槌のように、あなたを大きく成長させてくれることも。