野原を歩いていた学生が、罠にかかったOBを見つけました。
「かわいそうに。助けてあげましょう」
解放されたOBは小躍りして喜ぶと、ボロボロの頭巾を学生に差し出しました。
「これは、動物の言葉がわかるようになる不思議な頭巾。お礼にどうぞ」
「きったねえ頭巾」
リクルートスーツにまるで似合わないそれを、学生はとりあえずかぶってみました。すると……
「マジだ!」
電線に止まったスズメに、ブロック塀の野良猫、土の中のミミズまで。動物たちの会話が、まるで人間が話しているようにはっきりわかるではありませんか。
「これは何かに使えそうだ」とはいえ何に使えるかパッと思いつかなかった学生は、しばらく頭巾をかぶりっぱなしにすることにしました。